人間の脳味噌なんてちっぽけなもので、


きっと何年も一緒にいたあんたの顔も


3日もすればボヤけているんだろう








だからわたしたちは繰り返していたのに








会って、抱き合って、存在を確かめて


会えない時間にボヤけてしまった輪郭を、


また鮮明なものにするために























もうそれが出来ない























最後に可愛らしく泣けないし


未練がましく縋ることも出来ない


あんたの幸せを一番に祈れるようないい女にもなれない








あんたの声もあんたの顔も


きっとこの記憶から零れていく








だけど


わたしはあんたの存在を


思い出し続けるんだろう























わたしの最後の精一杯の強がりを、


どうかあんたは気付かないふりをして



































憎たらしく笑う、口
笑うと無くなるくらいに細くなる目元
ちいさなわたしを、すべてを、包み込む大きな手
いつもいつも遠くを見据える真っ直ぐな瞳
低くて、だけど都合のいい時だけ甘くなる声
鼻をかすめる癖のあるマイナーな煙草の香り


ただいつも静かにそこに在った、温もり




ひとつでいいから残していって





20091029