紫煙が天井に上っていく。
この男の手から。
なんてことない、いつもの事。









「ねえ、


甘く、とろけるような


キスが欲しい。」









「・・・なに、頭イカれた?」


失礼な。そんなわけない。ほんの冗談じゃん。
あたしの眉間に皺が寄ったのを見て、目の前の男はケラケラと笑い出した。


「傑作、その顔」
「うっさい」
「大体なんなの?あまく、なんだっけ?」
「甘く、とろけるようなキス!女の子なら一度は憧れると思うんだけどなー」
「へー」
「興味ナシですか」
「うん」
「酷い男だ」
「まあな。つかお前、そういうキャラじゃねーだろーが」
「バレましたか」




「馬鹿か。」


そう言って彼は不意にあたしの腕を引く。
瞬時に塞がれた唇。口内に拡がる、苦い味。
彼のくれるキスはいつだって、甘さとは正反対。
煙草のほろ苦さ。
だけど、それでいいと思ってしまうのだ。
あたし、相当頭イカれてるかも。


「・・・。」
「どうよ、俺の大好きなセヴンスター味。イカすだろ?」
「いいから火消せ」
「ムード台無しだなおい」
「煩い、煙いもんは煙いんだよ!」





20091024