#071 いま思えば ふと会えた時は嬉しいのに哀しかった これが最後になるかもしれないって、 いつもそれだけだった だからあの冬 「じゃあね」は何時だって一生の別れの様な気で口にしてた 卒業までに彼のあの姿を見ることが もう出来ないかもしれない と思ったから 「またいつか」は もう無いかもしれないと 感じていたから ずっと同じ街で育ってきたのに滑稽な話だね だけどぼくには終焉が見えていた ずっとずっと昔から 進学するなら大半はいずれ出ていく、 あたしたちの育った街は、そういうところだったから 終わりまでのカウントダウンが いつまでも耳から離れない、 最後の冬 だった #072 こんな空虚感も孤独感も、 あのひとは感じていませんように こんな汚い空の色も、不味い空気も、正しくない冬の匂いも、 あのひとは知りませんように ただ大好きな故郷を、あのひとが忘れませんように #073 聞きあきたはずの声を 見飽きたはずの後ろ姿を この一瞬を 今ここに閉じ込めたいと、 柄にもないことを思った最後の冬 もう3年が過ぎたんだなあ #074 恋なんてしたくない 友達も欲しくない だってそれは、 日常が変わることは、 忘れることに似てるから 毎日は上書きされて、 あの頃は遠退いていくのだから 変わることを拒み続けたら、 あたしはあの頃のままでいられるだろうか そう思っていた、彼が消えた春 #075 白く浮かぶ度に 息をしているんだなって 寒さに手先が動かなくなる度に 生きているんだなって 確かに感じられた冬はもう遠い 思い出ばかりがちらついて冬は余計に哀しくなる もう誰もいない もうなにもない 雪なんか降らない、 嘘っぽい都会の寒さは今年でもう三回目 back |