#051 帰るよ 半年振りに 新宿発のバスに乗って数時間 徐々にビルが姿を消して 山が、緑が、増えていく景色 その移り変わりを見ているのがすき ほんのすこしづつ故郷に近づいていく感覚 きみのいた風景が視界に入ったら きっと僕の心臓はキリキリと痛むだろう きっと泣くだろう きみはあの街がすき? ぼくはすきだよ きみと出会った街だから きみと育った街だから ぼくのすべてがつまった街だから ぼくは追いかけてしまう きみの面影 此処にあったはずの、きみの後姿 もういないのに #052 久しぶりの故郷は やっぱりすこし胸が苦しかった 思い出の染み付いた田舎街は 何処にいても彼の面影が在った 風の感触とか夏の匂いとか 毎年恒例の夏祭りとか花火大会とか、 あの街で暮らしていたころは当たり前だと思っていたことが もう当たり前じゃなくなって 懐かしくて、遠くて、それでも愛おしくて、 ぼくは もう戻れないあのころを馬鹿みたいに反芻した 彼のことも あのころのことも ぼくが生きれば生きるほど、 遠ざかって思い出になる 分かっていても それが どうしようもなく悲しかった #053 きみの柔らかい笑顔を、 あの冬の日を、 きみに隠した涙の味を、 涙で滲んだ帰り道を、 ただ 今も、 消えていくのに思い出して いつまでも覚えていたかった なによりも、 苦しくて愛おしい ちっぽけなぼくの 少しの思い出を #054 きみの住む街にもう秋風は吹きましたか ぼくの住む街はまだ暑くて 秋らしいものはなにも見つけられません きっと僕らの生まれ育った街は今ごろ 秋の訪れが体でわかる、そんな涼しい風が吹いているだろう 四季を感じられるあの街が、 ぼくはやっぱり恋しいです #055 肌寒くなってきた でも、 故郷の秋の感覚には程遠い だからかな 鼻の奥がつーんてなる なみだが、でる back |