#026


いつか呼吸が止まるなら
いつかあの青空をみることができなくなるなら
いつかぼくがぼくをやめるときが来るのなら


あの日が良かった


生まれ育った小さな田舎街で
息が苦しくなるほど泣いたあの日
すべての終わりを悟ったあの日






この街でぼくは一度も心が満たされたことはない
いつもあの青空と満天の星空に恋い焦がれて生きている


吐き気がするほど不味い空気を吸って
灰色の空を見ながら




あの青がみたい











#027


あたりまえ、なんてない
ぼくはそう思っている
14さいのあの日から


だからぼくは
こわかった
あたりまえ、になりそうだった毎日が


いつか終わりが来る、きみがいる日々に
慣れてはいけないのに
出逢って十数年
きみはずっといるから






18さいになったばかりのあの日
もうすぐあの街を出ていくあの日
きみをみる、日常が終わるあの日
高校の卒業式


ぼくは本当は泣いた


卒業することが悲しかったんじゃない
それよりも
もう
18年生まれ育ったあの田舎街に
ぼくもきみもいなくなることが
毎日見てきた景色はもうなくなることが
どうしようもなく悲しかった






あたりまえなんてない


ぼくは
いつも


きみがいることが奇跡だって思ってる











#028


この街ではなんだって手に入るのよ
雑誌に載ってる洋服も
口コミで人気のスイーツも
おすすめのテーマパークも
なんだってあるの
ぼくの生まれた田舎街とはなにもかもが違う


それなのに
ねえ


忙しなく途切れることのない人の波
驚くほどのスピードで立ち止まることを知らない


ねえ
これ以上になにを望むの






めがまわるよ











#029


たとえ夢でも思い出せるならなんだっていいよ
忘れないなら何だっていい
きみの声も、笑顔も











#030


ひどくきもちのわるい夢を見た
恐怖と、
絶望


目が覚めて
そのまま
ただぼんやりと天井を見つめた
彼のことを思い出した


広がる空虚
灰色に飲まれる






いつかまた、
(それはいつ?)


どうかしあわせで
(ぜつぼうは、ぼくがたべるから)




ぼくみたいな
うしろむきで
どうしようもないにんげんのことは
わすれて


(わすれないで)











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