#016


いつかの写真
やわらかい時間が流れる生まれ故郷の春の土手で
小学生だったぼくらが同じ空間にいる
懐かしくて遠い、いつか


きみは忘れしまったかな


ぼくはあのころがいちばんすきだった
ぼくの世界はちいさな田舎のあの街で
なにも知らないからこそ、しあわせで
きみがいて
ただ真っ直ぐにわらっていられた


ぼくは染まってしまった
無駄なことを随分知りすぎてしまった


もう戻れない
分かっていても、悲しいよ











#017


ねえ
あれから
「もしもここにきみがいたら」
それがぼくの口癖になったよ


こんなに苦しいいま、きみがここにいたら
きみは前を向くだろう、と
辛くてもあきらめたりしないだろう、と
悲しくても
それでも笑うだろう、と
ぼくはあのころのきみを思い浮かべて思ったりするよ


きみはいつでも真っすぐだったから


きみはいまでもあのころみたいに生きているのかな











#018


いまぼくが住む街には
きみに、
見せたいとおもう空はないよ
白くて、いつでも曇っているような都会の空の色


こんな空を
どうかきみは知りませんように


生まれ故郷のあたたかい空の色を
いつまでも忘れませんように


今日そらを見てぼくは、ただそんなことを思ったんだ






あのころ
きみの姿越しに見た、


高くて大きな透きとおる青空を
思い出していた


な み だ が で そ う だ っ た、











#019


きみがうまれてきてくれたことを
ぼくはかんしゃする


きみがいまを
いきていることを
ぼくはただ、かんしゃするよ


あのころ
きみのいたせかいは
ぼくにとってきせきだったから


おおげさだってわらわれたとしても











#020


哀しみに飲み込まれて
ただ思い出したように空を仰ぐ
でもあの青は此処にはない


苦しみから逃げるように
夜空に光を求めても
この街の空に星は見えない


きみの後ろ姿を思い出しても
あの交差点を探しても


ないのだ、
なにも


きみはいない


ばいばいあの日々、






空っぽになってしまった心を
満たせずに今日もただ呼吸を続ける











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